バッタが可哀そう
晴れた日に満開の桜の木の下でお花見弁当なんて、日本ならではの文化なんですかね。
公園の草むらにレジャーシートを引いて家族そろってのお弁当となると、見ていた私も思わず頬を緩ます光景ですよね。
我が家には随分前から3箇所にわたってツバメの巣が造られていました。
2年ほど前の梅雨時期だった、ある個所の巣では7羽の雛が孵り、日ごと成長するのを見るにつけ、私の心配事が現実となりました。
いくら戻してやっても成長の速いのが動くことで幼鳥が押し出されて落ちてしまうのです。
以前から、幼鳥の餌には「生きた昆虫」が望ましいと聞いておりましたので、羞恥心を捨て、朝に夕に毎日のように近くの公園に出かけました。
この公園は71.9haの壮大な面積を有し、バーベキューなどのアウトドアレジャーから、犬の散歩やウオーキングなどと、年齢を問わず多彩に楽しむことができます。
(ちなみに東京ドームのグランド面積は1.3ha)
60歳を過ぎた私が遊歩道沿いの雑木林で「虫捕り網」を振り回している光景はそこを通る人なら誰だって気になるでしょう。
「いい年をして何をしているんだろう」と、つい声を掛けたくなるのが人情だ、
ご夫婦で散歩中なのか「なにが捕れるんですか」と女性のかたが、
またある方は「ご一緒にお探ししましょうか」と、まるで私が「落し物」したかと決めつけての申し出もありました。
毎日お会いするうちにいつの間にか「今日もご苦労様ですね」と励ましを頂くことも有りました。
ある日、小学5~6年生ぐらいの少年が声をかけてきました。
「おじちゃん、なに捕ってんの」
私は、いつもの同じ質問に、つい煩わしくなって「バッタ!」と素っ気ない返事をした、
するとその少年は更に突っ込んできた。
「バッタなんか捕って何するの?」
私はこれにも作業の手を止めることなく「ツバメの雛の餌にするねん」と、
彼が少年だったからでしょう、その経緯を説明することなく大柄な会話をしてしまった。
すると私の背中越しに返ってきた少年の言葉は意外なものだった。
「バッタが可愛そう・・」
その少年は私の意図にそむいたことを気づいたようで振り返ってみると、逃げるように走り始めていた。
そうか、彼にとってはツバメよりも草むらの昆虫たちの方が、きっと大切だったに違いない。
彼はきっと、食卓に並ぶ、お肉やお魚の流通をいまだ、習っていないのかも知れない。
それとも、動物の世界にむやみに手出しすることを嫌ったのかもしれない。
来年のお花見のレジャーシートは昆虫が居なくなってからにしないとね。
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