アナログ的な働き方改革

  昨年末から、各メディアで話題になっている出来事の一つが、宅配業者の限界であり、そのセールスドライバーの「悲鳴」である。

  ここで言う、セールスドライバーとは、荷物を集荷する(集めに来る)方のことで、業者によっては、配達業務と兼任されている場合が普通だ。 

 私もしばらくの間、通信販売を業務としていた時期が有りますが、その範囲でお話すると、私の会社が一日で50件のお客様に商品のご注文を頂いたとすれば、それを全国にお届けするためには、梱包した製品に送り状を貼りつけ、後は宅配業者に委託することになる。

 その際、荷物を集荷した宅配の営業所が、「送料」と言う名目の売上を上げたことになる。だから、多くの荷物を出した時は「今日は沢山のお荷物出して頂き有難うございます」と笑顔でお礼を言ってもらったものだ。

 ただ、お中元、お歳暮の季節になると、集荷担当のセールスドライバーは不機嫌になる。 

「どうしたんだ」と尋ねると、ドライバーは「お中元、お歳暮の期間は仕事が夜間までになる」と嘆く、 夜遅くまで配達、再配達の業務で走り周り、営業所に戻ると翌日の準備もしなければならないそうだ。 この時期それを聞くと、何か協力できないものかと、夕方に急ぎの追加注文が発生しても、私自身が業者の営業所まで荷物の持込をしたもんだ。 

 昨年末の「ドライバーがお客さんの荷物を路上に投げつけていた」映像など、あってはならないこととは言え、それは、この業界の労働者の限界を物語っているようであった。 

 そんなことからでしょうか、この度の春闘では、恒例のベースアップとは別に「荷受量の制限」と「長時間労働の改善」などを会社側に要望した労働組合があった。 このことは、ある意味、ネット販売は大きく右肩上がりの成長をしていることの証であり、IT業界にとっては喜ばしいことである。しかし、末端のアナログ業務が追いついていない。ここでも人手不足が原因になっているのだろうか。

 

 私は人手不足だけが原因ではないような気がする。偏屈(へんくつ)な私は、逆ではないだろうかと、考えたくなる。つまり労働組合が要望したように「荷受量の制限」を設定しなかったことに原因は無かったのか。

 もう一つ、これも組合が指摘していた「荷受けの単価」が安すぎると言う、事実も忘れてはならない。 だって、商品販売業者のページでは「送料無料」なんて表記がなされている。利用者には有り難いようではあるが、 どちらの宅配業者も無料での配達は受けていない筈。でも、その荷受け単価が限りなく「無料」に近い金額で有れば、品代の利益の範囲でそれを補うことが出来るからだ。 商品を販売する業者にとって、売り上げを上げるための条件に「送料無料」の表記は他店との競争で、かなり優位になる。 でも私は、このような次元で競争していたら、何時か、何処かで、そのしわ寄せがやってくると、確信していた。

 外食産業や24時間店舗でも、人手不足が原因で店舗数の減少を余儀なくされているようである。 「値下げをしてでも、売り上げを上げないと」これは商いを軌道に乗せる施策ではあるが、破たん寸前にある、破れかぶれの施策でもある。そのような繰り返しが「デフレスパイラル」を促進することにもなっている。

 「適正な送料」を提示することで、幾人かのお客さんが実店舗に流れたとしても、地域活性にとっては、それも良いことである。

 また、店舗数が減少しても、適正価格を提示することで安全やサービスが向上すれば外食産業の、それもよい。 輸出産業ならグローバルに試算しなければならないでしょうが、せめて国内だけをシェアーしようとするならば、大企業さん、ここらあたりが「働き方改革の時期」ではないでしょうか。

幾らデジタルが進化しても、所詮「1と0の世界」 末端でのアナログ的なサービスは真似できないはずだ。

Willful gunny

過去から現在の出来事を実体験から解説しています。

0コメント

  • 1000 / 1000